ファッションモンスター

女性はいつだって、いくつになったって、お洒落に敏感であります。

先日、服屋を経営している友人とご飯を食べる機会がありました。
地元で服屋を営むその友人が語るところによると、今の弘前という街で安定した売上なんて期待出来ない、と。一日に何十万も売れる日もあれば、何も売れない日もある。服が一枚も売れなくても、何万かの取り置きをしてくれたお客さんのおかげで一日の売上が担保される日もある、と。

その友人との話の中で一番興味深かったのは、女性は男性よりも計画的に服に対してお金を使ってくれるという事でした。
馴染みの常連の男性客でも、今月は飲み過ぎて服に遣えるお金が無いんですよって話はよくあるそうですが、女性は違うと。十万、あるいは二十万という買い物をクレジットカード10回払いなどで買ってくれるのは女性客だといいます。

僕は渋谷にいる機会が多いのですが、驚くのは娘と母親と思しき親子が揃ってフォーエバー21の袋を持っている光景です。
渋谷にはH&Mやフォーエバー21、ザラなど、所謂ファストファッションと呼ばれる比較的低価格の商品を販売しているブランドが店を出しています。彼女達はそこに親子で買い物に行くのでしょう。
もちろん、その親子達はたまたま東京に遊びにきている観光客かも知れません。観光名所的な意味合いでそういったブランドで買い物を楽しんでいるのかも。
ただH&Mの袋を持ったお父さんを、渋谷で見た事は一度も無いんです。


ファストファッションの意味を、僕はこう考えています。
つまり、ファッションの速すぎる流行に対応する為に比較的安価な、あまり素材には拘らず、デザインに特化した服を提供する事と。
そして、ファストファッションが対応する速すぎる変化とは、流行だけではなく、着る人の考え方だったり、広い意味でのスタイルだったりするのではないのかと考えます。

10代20代の若い女性は、着たい服も欲しい服も、どんなスタイルで着てみたいかという事も、30代40代の女性に比べてとても速いスピードで変化するはずです。その意味でもファストファッションは便利だし、お求め易い。そこに人気の理由があると思っていたのですが、そういった若い女性のお母さん世代も一緒に買っていると。
これは正直、驚きますよ。
あまり変化を好まないと考えられる、その世代の女性もファストファッションに手を出している。これはつまり、流行やファッションにまだまだ敏感ですってアピールではないでしょうか。


それでは、何故男性はそこまで敏感になれないか。
これは結局、そういった訓練を受けている男性が非常に少ない事が原因だと思います。仕事が忙しく、ファッションなんてのは面倒くさいだけのもの。それなら休日もチノパンにジャケットでええじゃないかと。
これはもう、まったくもってうちの父です。
やはり家にいる時間の長い女性の方が、自分を磨こうと考える時間も長くなるのは必然でしょう。

ただやはり、個人的に40代から50代の女性がファストファッションに手を出すのは危険だと思います。
一つにはその年代の女性に合うようにデザインされたものではない為。もう一つに、ファストファッションを楽しめる柔軟さ、変化に適応する柔軟さがその年代の女性にはあまりない為。
人は誰しも歳をとるにつれて、保守的になっていくものです。歳を重ねつつ、変化も重ねるというのは簡単なことではありません。
ファストファッションは、その変化を常に要求してくる難儀なファッションだと思うのです。