一ヶ月前の話

ちょうど一ヶ月前の話ですが、僕は仙台のボーカルさんのところにお邪魔していました。
目的は石巻から南三陸の海岸線沿いを車で見て回る事。あの震災から一年半が経過した今、津波の被害が大きかった宮城県北部の海に近い地域の復興がどれだけ進んでいるかを、この目で見たかったのです。

その状況については、ボーカルさんも書いているのですが、本当に想像を絶するものでした。
僕はテレビを持っていないので、現在の震災関連の報道のされ方についてはよくわかりませんが、容易に想像出来るのは何も報道されていないという事。おそらく、テレビや新聞はもう震災の報道には飽きていて、次にそんな報道がされるのは震災から二年が経った来年の3.11でしょう。
お金を稼ぐ為に、それは仕方の無い事かもしれませんが、やはりそれでは社会は変わらないよなーと思います。

以前にも書いた事があるのですが、津田大介さんのDVD「おくの細道2012」は、福島からこの石巻、南三陸陸前高田、最後は六ヶ所原燃PRセンターへ取材をしながら車を走らせるという内容です。このDVDで紹介されているところを、ボーカルさんの車の運転で回ってきました。

石巻から南三陸へ車を走らせる中で一番衝撃を受けたのは、もう走る事の出来なくなった車が山のように積まれている光景です。これは当然と言えば当然の事です。そこに住む人たちや住んでいた建物だけではなく、貴重な財産であり、地方では欠かせぬ移動手段である車も、津波によるダメージを受けていたと。
衝撃だったのは、その光景だけでなく、そんな事を何も考えていなかった自分です。テレビや新聞の報道、DVDに映る景色だけを現実と、無意識のうちに認識していたのです。

また幾つもの廃車の山が出来るほどにその地域の車が無くなってしまったという事は、その分だけ、そこに住む人たちの生活は元に戻っていないとも考えられます。崩れ落ちた橋や、瓦礫や土砂などで断絶された線路なども、まだまだ元に戻っていません。
やはり一年半で元に戻るような規模の被害では無かったのだなぁと、改めて気付かされました。

車を走らせていたら道に迷ってしまい、図らずも仮設住宅を見ました。そこでは50〜60代くらい、あるいはもう少し上の年代の女性の方々が輪になって話している光景を見たのですが、もう何とも言えない気持ちになってしまいまして。当たり前の事ですが、そういう生活をされている方はまだまだいるのだなぁと。

津田さんをはじめ、震災関連の取材をしたジャーナリストの方などが必ず口にする言葉に「とにかく被災地に行ってみるべき」というのがあります。特に津田さんは「行ってみて、被災地にお金を落とす事が復興への近道」と言っています。

僕も本当にその通りだと思いますし、その考えがあるからこそ先月行ってみたのです。
しかし、何故行くのか、行って何になるのか、という事を思う方もいるでしょう。なんだこの津田信者は、と。まったく信者乙だ、と。
でもね、まず行って見なさいって。絶対、何かしら変わるから。

どれだけ外圧を受けても、最終的には自分の意志だけが自分を変える事が出来るわけです。つまり内圧です。
明治維新は黒船に乗ってペリーが来たから起きたってのは、半分しか本当じゃなくて、結局日本の中で志士達が奔走して沢山人が死んだからこそ維新は成し得たのです。


このツアーでは最後に伊里前というところまで行って、ゴールとしました。
帰り道、南三陸のホテル観洋の近くにあるカフェでコーヒーを飲んできました。そのカフェは、すぐ目の前が海で、おそらく津波の被害も受けたのだと思います。

そこで飲んだコーヒーが、本当に美味しかった。濃厚な甘さが口の中に残り、苦みは殆ど無い。

そのコーヒーを飲む為に、次は春くらいに行きたいと思います。
次は写真付きで、記事を書きたいと思います。