香港

先日、渋谷で「桃さんのしあわせ」という映画を観たので、今回はその映画の感想などを。

舞台は香港。桃さんは12歳の頃から60年、梁家でメイドとして働いていましたが、ある日、脳卒中で倒れた事をきっかけに、メイドの職を辞めて老人ホームに入る事を決意します。
梁家で桃さんと二人で暮らしていた映画プロデューサーのロジャーは、今まで梁家に尽くしてくれた桃さんの為に老人ホームの費用を負担し、多忙な仕事の合間を縫いながら、出来る限り桃さんに会う為の時間を作ります。
単なるメイドと雇い主という関係だった桃さんとロジャーの間に、やがて母と息子以上の心の繋がりが生まれていきます。

あらすじはこんな感じです。
この映画、とにかく予告が素敵でした。以前も書きましたが、やはり予告が素敵な映画は観たくなりますね。是非、皆さんも「桃さんのしあわせ」で検索して、予告を見て頂きたいです。予告だけで泣きそうになります。実際に本編を観て、三回くらい泣きそうになりましたが。

そして、印象に残ったのは香港の夜景と花火のシーン。調べてみると、香港の高層ビル群の夜景というのは「100万ドルの夜景」と言われるくらいに有名らしいですね。全然知りませんでした。函館の夜景くらいしか知りませんでした。

しかしながら、僕のような日本の一般庶民にはなかなかメイドや家政婦、あるいはお手伝いさんのような存在は馴染みがありません。例えば、ベビーシッターのような、赤ちゃんの間だけ面倒を見て貰うというサービスはなんだか想像出来ますが、桃さんのように60年も同じ家庭に仕えるなんて、やはり理解が出来ないんですね。
劇中で描かれる梁家を見ても上流家庭の雰囲気があるので、香港でメイドさんが一般的というよりは、その家庭の所得にも因るのだろうと思いますが。

本当に、梁家はお金持ちの雰囲気が出てまして。ロジャー以外の梁家は皆、アメリカに移住しています。その為、いまいち家族構成が分からない部分もありました。つまり、香港に住んでいる梁家はロジャーだけ。桃さんも独身で身寄りはなく、独りぼっち。この二人の間に映画で描かれたような絆、心の繋がりが生まれたのにはこの境遇も関係していると思います。また、桃さんがまっさきに老人ホームに入る事を選択した理由も、自分には身寄りが無いからだと思います。

老人ホームでは、ロジャーは桃さんの義理の息子という事にしていました。そして、ロジャーは本当に息子のように献身的に桃さんに尽くします。予告にもありますが、ロジャーと桃さんが手を繋いで歩くシーンは、まるで本当の家族のように見えてしまいます。自慢の息子と愛する母に。

この映画は、予告やチラシにも書いているように、桃さんの「人生の終い仕度」の映画です。やがて訪れるであろう最愛の人の死に、あるいは自分自身の死に対してどう向き合うべきか。重たく考えると、そんな問いをこの映画は投げかけているように思えます。
僕自身、今まではあまり考えていなかった「死生観」について、少し考えるきっかけになりました。
例えば今、実家の母や父が倒れたり看病が必要になった時に、僕は現在のこの生活に一端区切りを付けて実家に帰るのだろうか。あるいは、一体何歳までこの生活を続けて、何歳から実家に帰ろうか。など、考えると気持ちが重くなりますが、いつ何が起きるか分からないのが現実ですので。

とにかくこの映画、香港映画が好きな人、アンディ・ラウが好きな人以外にも是非見て貰いたい映画でございます。

ではでは。