洗い立ての空に映る笑顔

なんとも狙ってそうなタイトルですみません。
今日は「おおかみこどもの雨と雪」を鑑賞してきました。公開から二ヶ月以上経ちますし、既にご覧になられた方も多いでしょう。僕は観るつもりはなかったのですが、東浩紀さんがあまりに絶賛されているので観に行く事に。細田監督の映画は前作「サマーウォーズ」も観ているので、二本目になります。
このような場に真面目に映画の感想を書くのは初めてですので、少し緊張しております。若干のネタバレもありますが、ご了承下さい。お読みになる際は、何卒自己責任にてお願いします。

とは言え、あまり内容には触れないように、思った事を書きたいと思います。
まずこの作品は、おおかみこどもの母である花の学生時代から話は始まり、姉の雪、弟の雨の成長を描いた映画です。舞台が、花が子を産んだ都会から、何も無い田舎へ引っ越すところから子供達の成長が本格的に描かれるわけですが、中盤であろうここに来るまでに涙しそうになる場面がいくつもあります。これから観ようと考えている方は、ハンカチの用意を忘れずに。
幼少期はおてんばだった雪が成長するにつれ大人の女性になっていき、逆に泣き虫だった雨は強い男の子になっていきます。僕はまだ親になっていないので分かりませんが、例えば子を持つ親の気持ちというのは、自分の子をいつまでも子供だと思うのではないでしょうか。自分に子供がいれば、またこの映画について思う事も変わったのかなと思います。
雪と雨の親である花も、おそらくこのような思いで子供に接していたのではないでしょうか。しかし、様々な出来事がきっかけとなり、まだまだ子供と思っていた雪も雨も次第に大人へと成長していきます。
もしかしたら子供の成長に気付く事が、親にとっての成長なのかもしれません。終盤の、花の何かを決意したような笑顔は、なんとも忘れられません。

おおかみおとこと人間のハーフを育てるという、このファンタジーのような映画ですが、設定などは至って現実的です。舞台となる小学校ではモンスターペアレント不登校の問題もあります。監督の前作「サマーウォーズ」でもそうでしたが、アナログな人と人とのコミュニケーションも物語を支える柱になっています。
やはり細田監督はこういったコミュニケーションの必要性を訴えようとしているように思えます。監督の発言など、テレビなどは一切見ていないのでその辺の事はさっぱり分かりません。しかし、舞台が若者があまりいない田舎という事や、映画に出てくるメディアがラジオくらいという事から、やはりそう思えてならないんです。

物語終盤、雪がクラスの男の子に秘密を打ち明ける場面で、男の子は「もう泣くな」と言うんですが。これがなんとも泣かせるんです。つまり「もう泣くな」という台詞は観客に向けた「どうぞ泣いてください」にしか聞こえんな、というのが映画の最後に思った感想でした。

ここまで色々書いてきましたが、僕がこの映画で最も感動したのは映像と音楽でした。アニメとは言え、まるで本物のような山の風景やストリングスをふんだんに使用したクラッシク調の音楽。この二つが混ざり合うのを劇場の大きなスクリーンで観て聴けた事は、とても良い経験だったなと。

この感想を読んで気になった方は、是非劇場で鑑賞して下さい。僕が「サマーウォーズ」を観たのはPCの画面でした。あの映画もそうですが、この映画もテレビやPCで見るよりは劇場で観た方が良い映画だと思います。でかいスクリーンで、良い音響で。
ではでは。